死を覚悟した宗忠は、文化11年(1814)1月の厳寒の朝、幼いころから両親とともに毎朝手を合わせてきた日の出を拝みました。この“最期の日拝”の祈りの中に、宗忠は知らず知らずのうちに大変な親不孝をしていたことに気づき、せめて心だけでも両親が安心する人間に立ち戻らねばならないと大きく心を入れかえました。この世との別れの日拝は、新たな“生”への祈りに転回したのです。この心の大転換により、宗忠の暗く閉ざされた心の中に陽気な感謝の気持ちがよみがえり、その結果わずか2カ月で不治の病を完全に克服しました。
その年の11月11日、この日は昔から「一陽来復」と称され、物事が新たに始まる時とされてきた冬至の日でした。安永9年の冬至の朝に誕生した宗忠が、死の淵を乗り越えて34回目の誕生日をこの日迎えたのです。昇る朝日に格別の思いで祈りを捧げている時、宗忠は天照大御神と一体になるという“神秘的宗教体験”を得て、いわゆる“悟り”の境地に立ちました。黒住教では、このことを「天命直授」と称して、立教の時としています。
以来、宗忠は世の中の苦しむ人や助けを求める人のために昼夜を分かたず祈り、教え導き、多くの人々から“生き神”と称えられ、自然な姿で教祖と仰がれて現在に至っています。宗忠がその形を離れて天に昇ったのは、嘉永3年(1850)2月25日(旧暦)のことでした。
宗忠在世中に、現在の教団の基礎が築かれ、すでに数万の信者(道づれ)を擁していましたが、宗忠の昇天後、その生誕地であり住まいのあった岡山市上中野(宗忠の教えが「神道の教えの大元」と称えられたことにより、この地は“大元”と呼ばれてきました)を中心に、全国規模で布教がなされました。
神の位を非常に重んじていた江戸時代に「宗忠大明神」という最高位が授けられ、時の孝明天皇(明治天皇の父君)の信心も得、宗忠をまつった京都・神楽岡の宗忠神社(文久2年〔1862〕鎮座)は建立後わずか3年にして孝明天皇の勅命による唯一の勅願所(時の天皇が国家・国民の平安を祈るために指定した神社・仏閣)に定められました。
昭和49年(1974)10月27日、都市化の進んだ大元の地を離れて、黒住教本部は神道山(岡山市尾上)に、壮大な日の出を求めて遷座しました。大元には明治18年(1885)建立の宗忠神社が今もまつられています。
同時にこの事業は、新しい霊地を造るという形の上のことにとどまらず、教祖の信仰の原点に立ち返る新たな信仰運動でもありました。この“神道山時代”を迎えるにあたり、教祖の信仰体験をより一層、追体験するべく、6代宗晴現教主は次の「まることの生活信条」を示しました。
一、親を大切に、先祖を敬おう
一、明るいあたたかいことばを使おう
一、人に親切に、とりわけ弱い人にあたたかい手をさしのべよう
一、人のために祈ろう
さらに平成11年(1999)からは、「全国教会所一斉社会奉仕『まることボランティアの日』」が設けられ、全国各地の社会福祉施設等において、老若男女が一つ心にボランティア活動をつとめています。
平成5年(1993)に執り行われた第61回伊勢神宮式年遷宮には、昭和60年(1985)から教団を挙げて奉賛の誠を捧げましたが、これは日本の歴史、文化を正しく学び、一層日本の良さを知り、もって世界に通じる人になるべき大切さを訴えた運動でもありました。
こうした国際交流は伝統芸能の分野にもおよび、平成10年(1998)には吉備(岡山)の地土着の雅楽といえる吉備楽(黒住教の祭典楽)の公演会がアメリカ・ハーバード大学の主催により彼の地で開催されました。
さらに、神道山で、浄化処理後の使用済み生活用水を大地に戻す「神道山 水サイクル」を実施するとともに、モチ、シイ、タブ、カシ、クスなどの苗木の植樹と育樹につとめ、太古の森(照葉樹林)づくりを目指すなど、「神道国際研究会」で訴えられた環境問題にも取り組んでいます。
その後も、AMDA(アムダ:アジア医師連絡協議会)の支援活動をはじめ、リコーダー(たて笛)やオリジナルの英対訳絵本をフィリピンの子供たちにプレゼントするといった草の根の国際交流にもつとめています。
日の出を拝み、熱くなった心で人のために祈り尽くすことこそ教祖の心であるとの確信のもと、わが宗派・教団だけに目を奪われがちな“宗我”を捨てていくことを行動規範として、人々の幸せと世界の大和を祈りつつその実現につとめています。
そして、「人様にやさしく、お参りしやすい神道山」を目指して平成12年(2000)には、「神道山『動く参道』」(ベルト式エスカレーター)や障害者用エレベーターといったバリアフリー設備も整い、黒住教は自然にも人にもやさしい教団を常に心がけています。
一方、同年には大元に、各家々のご先祖のみたま様をおまつりする(ご先祖のご遺骨をおまつりできる)にふさわしい「宗忠神社『祖霊殿』」も完成し、「敬神崇祖」の心を21世紀を担う方々に伝えようとする、黒住教の拠点ともなりました。なお、お問い合わせ・お申し込みは宗忠神社「祖霊殿」係にお申し出下さい
主な年間行事として、歳旦祭(1月)、大元・宗忠神社節分祭(2月)教祖大祭、大元・宗忠神社御神幸(4月)、こども健康まつり、婦人会総会(5月)、大祓大祭(6月)、ヤングのつどい、まることサマーキャンプ(8月)、神道山ご遷座記念祝祭(10月)、冬至大祭(教祖生誕及び立教祭:12月)等があります。
教会所は全国に343カ所。機関誌として月刊誌「日新」があります。